Japanische Klassiker mit Furigana
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せっぷんをぬすむおんなのはなし
接吻を盗む女の話
佐左木 俊郎
Lesen Sie 接吻を盗む女の話 (せっぷんをぬすむおんなのはなし) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 4.474 Zeichen · 10 Bildschirme
一 街裏の露地で
社は五時に退けることになっていた。
併し、鈴木三枝子は大抵の日を六時か六時半まで社に残るのだった。別に仕事はしなくてもタイム・レコードで居残り割増金をくれることになっているからだった。
鈴木三枝子は、昼の仕事をなるべく残すようにして置いて、居残りの時間をつくるようにした。地方の読者への勧誘状を書いたり、問い合わせに対する返事を書いたりして、彼女はどうかすると、八時頃まで残ることさえあった。
或る出版会社に勤める彼女の僅かばかりの月給では、夫の失職中、そうでもしなければ、一家の生活を支えてゆくことがとても出来ないのだった。
その日も三枝子は七時まで社にいた。日曜の前日という気持ちから、余計に働いて帰るつもりなのだった。
社を出るときには、電燈の光がなければもう暗かった。彼女はそれから市ヶ谷見付に出て、新宿までは省線、それから京王電車で初台まで行くのであったが、満員の電車は、十時間あまりの労働でひどく疲れている彼女の上に、なお同じほどの疲労を押し付けずには置かなかった。
彼女の家は停車場から六七町ほどのところにあった。そこで、彼女の、今年四つになる女の子と、頭の白い母親とが食卓を前にして彼女の帰りを待っているのだった。