Japanische Klassiker mit Furigana
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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 177.454 Zeichen · 357 Bildschirme
H新聞の松岡は一人暮しで朝おそく起きると、すぐ内職の木炭画の写真肖像を描くのだったが、職掌柄、師団の方の戦死将校の肖像を引受けていて、部屋じゅう肖像画だらけであった。北側のうすぐらい部屋の中に生白い戦死将校の引延しの肖像画が架けられて、留守中に這入った造花屋の主婦は、慌てて部屋を出た程であった。
松岡は外出の時は必らず一枚ずつの肖像画を風呂敷に包んで出かけた。必ずフロックを着て黒の山高をかむっていた。坂を上りつめると大きな鉄橋だった。H新聞記者松岡正の人並勝れた風采は、誰が値踏みしても地方裁判所の首席判事くらいに見えた。或いはそれ以上かも知れない。かれは警察と市役所とを廻ると原稿を書いて四時頃に帰宅した。
別に何処へ行くということもなく、社からかえると肖像画を書くくらいが仕事であった。造花屋や小間物屋の受けもよかった。食事は造花屋でこしらえていたが、晩食だけであった。夜もおそくまで画架に向っているらしく能く造花屋の主婦は、三階から小用に降りてくる松岡の足音をきいた。三階から二階へ下りてくる松岡は静かに足音をしのばせて、穴蔵のすぐ横のはばかりへ這入るのであった。