Japanische Klassiker mit Furigana
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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 177.454 Zeichen · 357 Bildschirme
足音は襖の前に止ったが、襖は辷りよくむしろ何気なく開いたような様子だった。女は肩さきを斬られたように驚いて、冷汗を掻いて仰向いた。
松岡正は入口で女のことを聞いたものらしく、冷然と澄し返って黙って、壁の方へ行って上着を脱いだ。女は黙ってうつ向いているだけだった。松岡は明らかな不愉快さを表情にうかべると、表の障子を勢よく、あまりに勢よく開けたのだった。寺の境内が見渡されるのだが、何かの忌日で赤い流れ旗が一ながれ夕やみの中によどんで見えた。松岡はズボンを脱いで、和服に着かえると手拭を下げて又長い階段を降りて行った。そのスリッパの音がきゅっと皮砥のように鳴っていた。
女はうつ向いたきりであった。それは一生懸命にうつ向いているようであった。松岡が這入って来て、煙草をくわえたまま、ひどく高びしゃな調子で突っかかった。
「何時来た?」
女はうなじをぴりとうごかした。そして漸と顔を擡げると、ひどく感動して声の出ない掠れた声音で言った。
「三十分ほどさきに参ったのでございます。」
「三十分程前に?――どうしてそんな気になったのだ。おれは別にお前を呼びはしないんだが……」