Japanische Klassiker mit Furigana
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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Lesen Sie 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) von 室生 犀星 (むろうさいせい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 177.454 Zeichen · 357 Bildschirme
先刻、女を素気なく、ああまで素気なくしなくともよかったと思うたが、同時に昼間八時間も汽船にゆすられて来た女の、汽船ではいつも女が悪く胸気を嘔かれて苦しがることも、(大方きょうもさんざん船の中で苦しがっていたことは、浅ぐろい皮膚の下に覗く紅味が少しもないことで解っていた。)又思い出すともなく考え出した。あの女はあのまま帰ったに違いないが、しかし、ああやって階下の主婦にまで会いながら、殆ど三十分も経たない内にすごすごと帰って行ったのが松岡には余りいい気もちがしなかった。しかし、松岡は女から隔れる気もちで、出来るだけの素気ない冷淡さをよそわねばならぬと思った。
松岡はうつらうつらした時分に急に誰かが襖のそとに佇っているような気がした、そして起き上ると、曾つて一度も覚えたことのない恐怖に充ちた気もちで、襖のそとを窺うた。誰かが佇って呼吸をしている、すくなくとも或る量のある肉体が、襖一枚の外にどっしりと、暗みを浴びながら部屋の内側を圧しているような気がして、息苦しいばかりの静かさであった。
「誰だ、」
松岡は神経的に黄ろい声で叫んで、襖をがらりと開けたが、誰も立っていなかった。