Japanische Klassiker mit Furigana
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となんせんせい
斗南先生
Lesen Sie 斗南先生 (となんせんせい) von Nakajima Atsushi (中島 敦) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.262 Zeichen · 44 Bildschirme
伯父は、どんな大旅行をする時でも、時計など持ったことがないのである。
彼は東京駅まで送るつもりで、制服に着換え始めた。伯父はそれが待ちきれないで、例の大きなバスケットを提げて部屋の外へ出ると、急いで階段を下りて行った。と、先刻の蛇の目を忘れたことに気がついたらしく、階下から「三造さん。傘! 傘!」と大きな声がした。彼は面喰った。いまだかつて伯父は彼の事を「さん」づけにして呼んだことはなかったはずである。いつも三造、三造の呼棄であった。彼は、その伯父の呼方の変化に、伯父の気力の衰えを見たというよりは、何かしら伯父の精神状態が異常になっているのではないかというような不安が感じられて、ギョッとしながら、傘をもって階段を下りて行った。
表へ出ると伯父は円タクを呼んだ。どうせ文求堂に置いてある荷物も持って行くのだからと伯父は言いわけのような調子で言った。支那風の扉をつけた文求堂の裏口で車を停めると、中から店の人が、がんじがらめにした行李を一つ車の中へ運んでくれた。
車が東京駅に近づいた頃、伯父は彼に向って何か早口で言った。――伯父は非常に聴き取りにくい早弁で、おまけに、それを聞き返されるのが大嫌いであった。