Japanische Klassiker mit Furigana
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しゃよう
斜陽
Lesen Sie 斜陽 (しゃよう) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 89.822 Zeichen · 176 Bildschirme
そう言われて、私も、はっと思い当り、
「卵の母親?」
と口に出して言ってしまった。
「そう、そうよ」
お母さまのお声は、かすれていた。
私たちは手をとり合って、息をつめ、黙ってその蛇を見護った。石の上に、物憂げにうずくまっていた蛇は、よろめくようにまた動きはじめ、そうして力弱そうに石段を横切り、かきつばたのほうに這入って行った。
「けさから、お庭を歩きまわっていたのよ」
と私が小声で申し上げたら、お母さまは、溜息をついてくたりと椅子に坐り込んでおしまいになって、
「そうでしょう? 卵を捜しているのですよ。可哀そうに」
と沈んだ声でおっしゃった。
私は仕方なく、ふふと笑った。
夕日がお母さまのお顔に当って、お母さまのお眼が青いくらいに光って見えて、その幽かに怒りを帯びたようなお顔は、飛びつきたいほどに美しかった。そうして、私は、ああ、お母さまのお顔は、さっきのあの悲しい蛇に、どこか似ていらっしゃる、と思った。そうして私の胸の中に住む蝮みたいにごろごろして醜い蛇が、この悲しみが深くて美しい美しい母蛇をいつか、食い殺してしまうのではなかろうかと、なぜだか、なぜだか、そんな気がした。