Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 186.659 Zeichen · 372 Bildschirme
先ごろ十月。――北国出陣の帰りに、秀吉は、前田利家の三番目のむすめ――ことし十五になる摩耶姫というのを、もらって帰った。まや子、まや子と、これがまた秀吉の大気に入りで、小娘が子猫を抱いたように西の丸へ来ると、離さない。
いまも、その摩耶をつれて、外へ出たきり見えないので、たれよりも、気をもんだのは、お茶々であった。
茶々は、いよいよ美しくなり、いよいよ母のお市の方もしのぐばかり、美人系の織田家の高貴な血液を、春蘭の花の肌にも似た頬にも襟すじにも、仄見せて来た。けれど、かの女はまだ、熟れてはいない。男を解するにはいと幼かった。戦陣軍旅、多忙なりといえ、秀吉には、しばしば、禁園の木の実をもぎに忍びこむ余裕はなおあったらしい。それは近頃、茶々の素ぶりからも読むことができる。しかし茶々は、秀吉によく馴ついてはいたが、その点だけは、
(いやな小父さま)
と、断じて、禁園の盗賊に、春の扉は、ゆるさなかった。
茶々も、しかし、この年暮を過ぎれば、もう二十の春である。生理的にも、女の自覚が萌え初めて不思議はない。殊に、後宮生活の女性群のうちには、自然、それを助ける上品な淫らの香が濃厚であった。