Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.841 Zeichen · 376 Bildschirme
と、たずねた。
布を噛んで、肱の槍痍を巻いていた野中三五郎という若い近習が、
「いえ、些細です」
と、そのまま答える。
「これへ来い――」
と、さしまねいて、家康は彼に杯をとらせた。杯の底に三日月の蒔絵がしてあった。
押しいただいて、飲みほした後、三五郎は、
「これを拝領しておいてもよろしいでしょうか」
と、杯の底を見ていた。
「何にするのか?」
「身の誉れですから、この三日月を、家紋にして伝えたいと思います」
家康は、うなずいて、湯漬の箸をおいた。
なお距離はだいぶあるが、敵軍の銃声はさかんに聞えて来るし、庭さきの雪なども、城兵の右往左往に、忽ち泥土と変ってゆく。
雪はやんで、大廂ごしに見える夜空は、冴えかけてさえいた。それにまた、城下の町屋の焼けさかる火の粉がいちめんに舞っている。人に悲壮な感傷と、地に敗軍の呻きがなければ、麗しいともいえる空だった。
「松井左近はおるや?」
「おりまする」
「もっと寄れ。きょう引揚げる途中、よくいたした。家康に明日の命はないかもしれぬ。こよいのうち褒めておくぞ」
そのほか、きょうの戦場で、家臣たちのなしたあらゆる働きに対して、彼は洩れることなく、感謝と、賞のことばを与えた。