Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.841 Zeichen · 376 Bildschirme
家康は、老婆に眼をあつめている近臣たちを、あなたへ遠ざけて、ただひとりになって訊ね直した。
「恐れることはない。ただ、そもじの洩らした咽び泣きが、ふとわしの心へ食い入るようであったから問うてみるまでじゃ。何ゆえ、わしを見て泣いたか」
老婆はようやく面をあげて答えた。
「田舎者の婆は、巧みにものを申すことができませぬ。正直にもうしまするで、お怒りくだされますな。――殿のおすがたを見ましたれば、急にお恨めしゅうなって、つい愚痴なむせび泣きが出てしもうたので」
「わしが、恨めしいとな。してそもじは誰の妻か」
「加藤政次という郷士の後家でござりまする」
「では、浜松の家中にあって、先頃三方ヶ原で最期をとげた、加藤九郎次、源四郎、ふたりの母にあたるものか」
「おお。……殿さまには、あんな侍の端くれにも足らぬ若者でも、お忘れなく、お覚えおきくださいましたか」
「さては、ふたりの子を、戦場で死なせた悲しさが、この家康を見たとたんに、胸へこみあげてきたのじゃな」
「ありようは、それに違いございません。ふたりとも、ひと一倍、孝行ものでございましたゆえ……」
偽りなく老母はいってまた咽び泣いた。