Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.841 Zeichen · 376 Bildschirme
「……えッ?」
愕と、顔をあげて、藤吉郎はそういう人の面を見つめた。
「では、何と仰っしゃいます……。不肖藤吉郎の言をおきき容れ下さいまして、お市の方さま、和子さま達のおん身を……」
「夫人も子たちも、みな死の腕に抱いて、城とともに、果て終らんとしたは……長政が小さい量見であった。すでに死んだ身と思い極めながら、なお浅ましい愛憎やら煩悩だけはのこしていたのじゃ。……いま、そちにいわれて、思わず一笑をおぼえ、みずから恥じ入るものがある。――まだ若いお市、幼い者たちの行く末、くれぐれもたのみ参らすぞ」
「……身にかえましても」
藤吉郎は、大地へ額いた。
せつなに、かれの脳裡には、信長のよろこぶ顔が見えていた。
小我な欲望は、とどきそうなことでも得手とどかないが、忠節からほとばしる真心なら、どんな至難と思われることでも貫けるものではある――ということをひしと感じた。
「……では、後刻会おう」
長政はいい捨てると、本丸の奥のほうへ、大股にあゆみ去った。
つづいて三河守は、改めて、彼を信長の正使として、客殿のほうへ導こうとした。
藤吉郎は、起ち上がった。彼の眉にも、ほっとしたような明るさが見えた。