Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.841 Zeichen · 376 Bildschirme
「すぐ、蹴上の辺りまで、信長が襲せて来ましたッ。明智、朝山、島田、中川などの諸隊を先鋒とし、死にもの狂いの勢いで」
伝令のことばに、諸将は、耳を疑って、
「信長自身ではあるまい。信長がそう簡単に、難波の戦場から引っ返せるわけはない」
口々にいっていたが、
「山科の辺りで、味方の勢は、はや二、三百名も討死をとげました。なにしても、敵は勢いが烈しくて、例の如く、信長が、死ねや死ねやと、声をからして指揮にあたり、信長自身も、まるで夜叉か鬼神のように馬を駆って、これへ来る様子です」
浅井長政も、朝倉景健も、そう聞くと、顔いろを変えた。
わけて長政にとっては、妻の於市の兄にあたる信長である。かつては、義弟の自分にも優しい人であっただけに、信長の真に怒った形相が、ふと、正直な本心を慄然とさせた。
「退こうッ。叡山へ」
長政が、口走るような、急な語気でさけぶと、朝倉景健も、
「そうだッ、叡山へ寄れ」
と、どなって、同時に、騒ぎたつ本陣の将士へ、
「街道の民家へ、火をかけろ。――いや、先鋒の味方を、急いで、退かしてからだッ。――火を放て、火を放て」
と、号令した。
熱風は、信長の眉を焦がした。