Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.320 Zeichen · 398 Bildschirme
――御覧ぜよ、なお甲軍にはこういう者もおりますると、父信玄の霊に念じているのであった。
やがて、面をあげた。きっと全軍をそこから見ていた。
彼は、兄の勝頼のように、豊頬美肉の男子でなかった。長く田舎暮らしの質素に甘んじていたので、何の贅食も奢侈も知らない。颯々と山野の風に育って来た若鷹のような眼ざしを備えていた。
生年三十四歳、父信玄に似て毛ぶかく、眉は長く、唇は大きい。
「さてきょうは、雨かとも思うたが、一天は晴れわたり、遠山の桜も見え、死ぬには佳すぎるほどな日和となった。とはいえ、われら何ぞ、浮雲の富をのぞんで名を捨てんや。……ただ五郎信盛、一昨日の防戦に、見るとおり片脚に深傷を負い、進退もままならぬゆえ、まず、各※(二の字点、1-2-22)が最後のいくさを見とどけた後、悠々と、ここに敵を待ちうけて存分合戦の後まいるぞ。――いで、大手、搦手を押し開いて、雄々しき山桜花の散りぶりを見せよ」
その朝の彼のことばだった。
おう、おうッ、と答えあう声の嵐、口々に、畏まって候うと呼ばわり猛ぶ武者たちの人渦。そしてみな顔は、多門の上なる主人のすがたを仰いで、今を見納めぞと、しばしは同じ声のみを繰り返していた。