Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.320 Zeichen · 398 Bildschirme
「なぜ、火を放けぬッ。草だけ積んで見ていて何になるか」
煙は楼門の千本廂へ立ちのぼった。
「衆僧」
快川は初めて口をひらいて左右の法友へいった。
「諸人、今、火焔の裡に坐す。法輪いかに転ずるや。各※(二の字点、1-2-22)、転語を下して、最後のことばとされよ」
みな、一偈を唱えた。もう焔は欄をこえて、快川のすそを焦がしていた。稚子老幼の阿鼻叫喚はいうまでもない。いま偈を叫んだ僧も唸いてのたうちまわっていた。
快川は、いった。
「――安禅必ズシモ山水ヲ須ズ。心頭ヲ滅却スレバ火モ自ラ涼シ。喝」
快川の死は、それを眼で慥と見ていた者でも、いったい彼は死んだのやら生きたのやら、分らない気持につつまれた。
安禅必ズシモ山水ヲ須ズ
心頭ヲ滅却スレバ火モ自ラ涼シ
と、さけんだ焔の中からの声がいつまでも耳から去らなかった。
満身の法衣がみな焔と化し、腰かけている朱椅子も火になっていながら、快川の体はまだ、そのまま姿勢もくずれていなかった。
楼門の上の老幼衆僧がみな、焔の壁や焔の床に昏絶して、声も出さなくなり、びくとも動かなくなってからでも、快川のすがたはまだ紅蓮の傘蓋をいただき、猛火の欄にかこまれながら、椅子に倚って、平然としていたのである。