Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 200.320 Zeichen · 398 Bildschirme
表二階の障子をたてた部屋の内から、一人はかならず外を見張っていた。
七、八日目頃である。黒田官兵衛は、渡辺天蔵を連れて、池之坊の門口を出た。足の痛みもよほど快くなったとみえ、歩行にもさほど跛行をひいていない。町端れまで来ると、馬を雇った。そして官兵衛だけは馬の背にゆられ、六甲の麓を右に望みながら兵庫路へさして行った。
赤松の梢に、山藤の花が垂れていた。道はひくい山陰をめぐってゆく。ふと、官兵衛は馬をとめて、
「天蔵。この辺で休もうか。後の者が追って来たらしい」
と、云いながら、もう鞍を降りかけた。
おうーい、おうーいと遠く呼ぶ声がしている。渡辺天蔵にも聞えていた。またその声の主が何者かもわかっていた。
柔らかい春の陽を正面に、陽炎も立ちそうな崖の山芝を背に、官兵衛は、木の切株に腰かけていた。
わらわらと、そこへ喘ぎながら追いついて来た三名の旅人がある。どれもこれも、名乗り合わなければ知れないほど、顔も姿も変っている。みな黒田家の家来で、みな官兵衛の若年からそばに仕えて来た者たちではあるが――。
「おお」
「殿!」
官兵衛は、腰をあげて、突っ立った。――同時に、その足もとへ、三名の家来は、ひたと、ひれ伏していた。