Japanische Klassiker mit Furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lesen Sie 新書太閤記 (しんしょたいこうき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 187.757 Zeichen · 375 Bildschirme
内に敗る者
古来、内応醜反の徒が、利に走りながら、利を得て生涯を栄えた例しのないのもまた不思議だ。後日、その約束が無視されて、利に代るに、斬や毒を以てされ、或いは、自滅に委されても、天下の嘲笑はむしろ快とするのみで、誰ひとりその末路を憐れむ者すらない。
そうした史上無数な例も知らぬではない山路将監が、どうしてそんな愚に迷ったかというに、彼もまた、
(これだけは巧くゆこう。北ノ庄殿も確約していること)
と、自身の場合だけを例外なものに見、しかも戦が柴田側の勝利に帰すことまでを、強いて信じていたのである。驚くべき妄動というほかはない。しかし、後では彼も煩悶した。良心に問われもしたにちがいない。――が諾書はすでに渡してあった。悔ゆるも及ばずである。是が非でも明朝は内応を決行して、その砦に、柴田軍を引入れなければならない運命を自身で作っていた。
内に敗る者
十二日の子の刻頃である。
子の刻といえば、正に真夜半、篝も暗く、山中の軍営は、粛々、松の葉か、露のふる音ばかりだった。
「――御開門ねがいます。……ちょっと、御開門を」
誰やら頻りに陣柵の木戸をたたく。声も、憚るように忍びやかである。