Japanische Klassiker mit Furigana
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しんじゅのことば
新樹の言葉
Lesen Sie 新樹の言葉 (しんじゅのことば) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.156 Zeichen · 59 Bildschirme
それまでの、けわしい泥酔が、涼しくほどけていって、私は、たいへん安心して、そうして、また、眠ってしまったらしい。ずいぶん酔っていたのである。御不浄に立ったときのことと、それから、少女の微笑と、二つだけ、それだけは、あとになっても、はっきり思い出すことができるのだけれど、そのほかのことは、さっぱり覚えていないのである。
半分、眠りながら、私は自動車に乗せられ、幸吉兄妹も、私の右と左に乗ったようだ。途中、ぎゃあぎゃあ怪しい鳥の鳴き声を聞いて、
「あれは、なんだ。」
「鷺です。」
そんな会話をしたのを、ぼんやり覚えている。山峡のまちに居るのだな、と酔っていながらも旅愁を感じた。
宿に送りとどけられ、幸吉兄妹に蒲団までひいてもらったのだろう、私は翌る日の正午ちかくまで、投げ捨てられた鱈のように、だらしなく眠った。
「郵便屋さんですよ。玄関まで。」宿の女中に、そう言われて起された。
「書留ですか?」私は、少し寝呆けていた。
「いいえ、」女中も笑っていた。「ちょっと、お目にかかりたいんですって。」
やっと思い出した。きのう一日のことが、つぎつぎに思い出されて、それでも、なんだか、はじめから終りまで全部、夢のようで、どうしても、事実この世に起ったできごととは思われず、鼻翼の油を手のひらで拭いとりながら、玄関に出てみた。