Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しんじゅのことば

新樹の言葉

太宰 治

Lesen Sie 新樹の言葉 (しんじゅのことば) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 29.156 Zeichen · 59 Bildschirme

Aozora Bunko

I can speak

くるしさは、忍従の夜。あきらめの朝。この世とは、あきらめの努めか。わびしさの堪えか。わかさ、かくて、日に虫食われゆき、仕合せも、陋巷の内に、見つけし、となむ。

わが歌、声を失い、しばらく東京で無為徒食して、そのうちに、何か、歌でなく、謂わば「生活のつぶやき」とでもいったようなものを、ぼそぼそ書きはじめて、自分の文学のすすむべき路すこしずつ、そのおのれの作品に依って知らされ、ま、こんなところかな? と多少、自信に似たものを得て、まえから腹案していた長い小説に取りかかった。

昨年、九月、甲州の御坂峠頂上の天下茶屋という茶店の二階を借りて、そこで少しずつ、その仕事をすすめて、どうやら百枚ちかくなって、読みかえしてみても、そんなに悪い出来ではない。あたらしく力を得て、とにかくこれを完成させぬうちは、東京へ帰るまい、と御坂の木枯つよい日に、勝手にひとりで約束した。

ばかな約束をしたものである。九月、十月、十一月、御坂の寒気堪えがたくなった。あのころは、心細い夜がつづいた。どうしようかと、さんざ迷った。自分で勝手に、自分に約束して、いまさら、それを破れず、東京へ飛んで帰りたくても、何かそれは破戒のような気がして、峠のうえで、途方に暮れた。