Japanische Klassiker mit Furigana
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しんぱん ほうろうき
新版 放浪記
林 芙美子
Lesen Sie 新版 放浪記 (しんぱん ほうろうき) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 247.330 Zeichen · 497 Bildschirme
豚カツにバナナ、私は指で壁に書いてみた。
夕飯の支度の出来るまで赤ん坊をおぶって廊下を何度も行ったり来たりしている。秋江氏の家へ来て、今日で一週間あまりだけれど、先の目標もなさそうである。ここの先生は、日に幾度も梯子段を上ったり降りたりしている。まるで二十日鼠のようだ。あの神経には全くやりきれない。
「チャンチンコイチャン! よく眠ったかい!」
私の肩を覗いては、先生は安心をしたようにじんじんばしょりをして二階へ上って行く。
私は廊下の本箱から、今日はチエホフを引っぱり出して読んだ。チエホフは心の古里だ。チエホフの吐息は、姿は、みな生きて、黄昏の私の心に、何かブツブツものを言いかけて来る。柔かい本の手ざわり、ここの先生の小説を読んでいると、もう一度チエホフを読んでもいいのにと思った。京都のお女郎の話なんか、私には縁遠い世界だ。
夜。
家政婦のお菊さんが、台所で美味しそうな五目寿司を拵えているのを見てとても嬉しくなった。
赤ん坊を風呂に入れて、ひとしずまりすると、もう十一時である。私は赤ん坊と云うものが大嫌いなのだけれど、不思議な事に、赤ん坊は私の背中におぶさると、すぐウトウトと眠ってしまって、家の人達が珍らしがっている。