Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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いちかわくめはち

新編 近代美人伝 (下)

長谷川 時雨

Lesen Sie 新編 近代美人伝 (下) (いちかわくめはち) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 138.172 Zeichen · 277 Bildschirme

Aozora Bunko

水のごとつめたう流れしたがひつ理りのままにただに生きゆく

震災後下落合に家を求めてからを知っている人が、武子さんの日常を、バサバサしたなつかしみのない、親分の女房みたいだと評し、わざとらしいしなをつくるが、電話の声と地声とはちがい、外から帰ると寛袍にくつろぎ、廊下は走りがちに歩く、女中にきいてみたら、京都へゆく汽車の中では、ずっと身じろぎもしないで、座ったままだというのに――と、良致さんとの夫妻生活を、およそ男性のもとめるイットのないものとくさしたが、わたしは胸が苦しかった。武子さんはもうそのころ自分の表面的な職分と、自分の心だけでいるときとの、けじめがはっきりついて、卑近な無理解など、どうでもよいとの決心がついていたにちがいない。なぜなら、その人がいったようなただ、あざけた女に、こんな心の声があろうか、

さくら花散りちるなかにたたずめばわが執着のみにくさはしも

ちりぢりにわがおもひ出も降りそそぐひまなく花のちる日なりけり

さくら花散りにちるかな思ひ出もいや積みまさる大谷の山

まぼろしやかの清滝に手をひたし夏をたのしむふるさとの人

やうやくに書きおへし文いま入れてかへる夜道のこころかなしも