Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
二人の歩く道の下に岸がつづき真白な花をつけた枝が水面に垂れていた。ボートがこんなに見えない筈がないと思うと、矢代は「おーい。」と呼んでみた。
「おーい。」と東野の声が樹の繁みの下から聞えた。
「あら、東野さん、ボートに一人いらっしゃるんだわ。」
千鶴子は繁みを廻りスロープを降りていってみると、ボートの中にはやはり東野が一人しょんぼり坐っていた。
「久慈君まだですか。」
矢代は訊ねながら千鶴子と二人で灯の消えたボートに乗った。
「お一人で何してらっしたの。」
と千鶴子は気の毒そうに訊ねた。
「俳句を作ってたんですよ。」
「良い句出来ましたか。」
矢代の訊ねるのに東野は、「いや。」と云っただけで提灯の新しい蝋燭に火を入れた。
「おーい。抛っとくぞオ。」
と矢代はオールを持って森の中の久慈を呼びつつ少しあたりを漕いでみた。
「どこだア。」と久慈の声が遠くの闇の中からして来た。
矢代はまた呼びながら声の方へボートを近づけてゆくと、しばらくして久慈は水際へアンリエットと二人で現れた。
「やア、弱った弱った。ボートがどれも違うんで、分らないんだよ。」
互に顔がぽっと見えるだけの提灯の明るさの中へ、白鳥が水に浮んだ花の群れを胸で割りながら泳いで来た。