Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
随ってまったくこういう久慈とは反対に、故国の日本にいとおしさを感じている矢代と千鶴子との日に増す親密の度も、彼には自然に見えて淋しさも感じなかった。浮き流れる心――こういうものは故郷にいるときとは別して旅は早く移り変って抵抗し難いものがある。
久慈はホテルを出るとカフェー・リラのある方へ歩いた。行き違う人の靴がひどくきらきらと眩く光った。道路も日光の反射でときどき面を打つ強い光線に久慈は眼を閉じた。鼻さきの小窓の中に組合わされた刃物の巧緻な花の静まっているのを、わけもなくじっと眺めている千鶴子に近づき、久慈はもう何んの感動もしない自分の若い心の老い込みを、これはどうしたものだろうとふと思った。
「もう君は日本へ帰ったって君の考えは通用しない。」
と先夜東野に云われたことを急にまた久慈は思い出した。そうだ、これはもう通用しないぞと久慈は突然冷水を打たれたような寒さであたりの街を眺めた。停っているトラックのタイヤの凹んだ部分にめり傾いている車体が、均衡ある風景の中から意味ありげに久慈の視線を牽きつけて放さなかった。
「こんなに静かな街の中でも、人の頭の中には暴風が吹きまくっているんだから、おかしなものだなア。