Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「君の亭主は悪い奴だな。」

いきなりそんなに云う久慈を真紀子は一寸恐わそうな表情で眺めてからコーヒーを掻き廻した。

「久慈さん、へんよ。どうしたの今日。」

「だって、こんな外国で自分の女房を一人ほったらかす奴があるもんか。女が出来たって、迎いに来るぐらい骨折ったって良かろうじゃないか。」

「でも、仕様がないわ。あたしがいれば困るんですもの。」

「困るのは向うだけじゃないや。」

別に真紀子に特別な好意をよせずとも、気の毒で溜らぬという久慈の表情は真紀子も感じたらしい。飲みかけたコーヒーも一口唇をつけただけでまたすぐ降ろすと、突然俯向いてしまったまま暫く顔を上げなかった。

「大丈夫だよ。」

久慈は泣きかかっている真紀子の肩を強く打った。真紀子は顔を上げてハンカチで眼を拭いたが、すぐ快活に笑い出した。

「ウィーンって所は、ああいうところなんだわ。あたし、宅がいるもんだから、日本にいるときシュニツラのものをよく読んだの。あそこはユダヤ人問題と恋愛があるだけのようなところだと思ったんだけれど、行ってみてあたし、あそこにいれば恋愛三昧になる筈だと思ったわ。海のない国の寂しさっていうものが、浸み込んでいるのよ。