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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

真紀子は黙って舞台を見ていたが、

「こんなのもう分ってるわ。あたし、じゃ、行って来てよ。」

と云って立ち上った。みすみす危いと分っている享楽の中へ、自分のために真紀子を突き落すことは矢代は耐え難かった。彼は真紀子の手首を持って引き据えるように椅子へ腰を降ろさせると、

「やめなさいよ。」と力を込めてまた云ってみた。

「あなた、そんなにあたしが心配なの。自由なんですもの、あたし。」

「それや君の自由かもしれないが、女の自由じゃないな。」

「じゃ、千鶴子さんはどうですの。人格が違うんですか。」

真紀子は捨科白のように鼻をふくらませてまた立ち上り、矢代の手をぐいと振り放した。

「じゃ僕もお伴しようかな。」

矢代は真紀子の後からついて出ようとしてドアの傍まで行きがけたとき、突然真紀子は振り返ると、「駄目よ、あなたは。」と云って矢代の肩を突き飛ばした。

入口は桟敷の方へやや傾斜していたので矢代は後ろへ倒れかかったが、それでもまだしつこく廊下へ出ていった。彼は後を追いながらも、たとい真紀子は危くとも高や李に人格の立派なところのあるのが充分泛んだ容貌から感じられた。むしろ踊りに誘ったのは真紀子の方からに相違ないとも思われ、それなら自分の心配も或は真紀子の楽しみを不自由にしているにすぎぬのかもしれぬと、矢代は後悔さえするのだった。