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Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

にふり捨てようと決心すると、漸く平静を取り戻して甲板へ出ていった。彼は欄干に身をよせかけながら怒りの消えていく静かな疲れで暗い埠頭の敷石を見降ろしていたとき、背広に着替えた船長がプープ甲板から一人ごそごそ降りて来た。

「おや、お早くお帰りですね。」と船長は矢代に云った。

「ええ、足が硬直して動かなくなったもんですから、残念しました。」

「それや、惜しい。僕はこれから一つ、見物に行くところですよ。いつも見てるところで別に面白くもないんだけど、お客さんに頼まれたもんですからね、じゃ。」

船長は会釈して甲板を降り埠頭の方へ消えていった。いつも来馴れたものはヨーロッパも早や何の刺戟にもならず、あのように悠然と出来るものかと矢代は思いながら、身についた船長の紳士姿を羨しく眺めて放さなかった。

「どなた。」

しばらくして、千鶴子は矢代の後ろへ来ると訊ねた。

「船長ですよ。これから見物に行くんだそうです。あの船長はなかなか自信があっていいですね。外国人は、こちらがちやほやするほど、嬉しそうにして見せて、肚では相手を軽蔑するというけれども、日本人がヨーロッパ、ヨーロッパと何んでも騒ぎ立てるのは、これや、貧乏臭い馬鹿面を見せる練習をしてるようなものかもしれないな。