Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
閑のきくときに一人の婦人にも満足も与えられないような男なら、日本へ帰って何をしてもしれていると思われたからだった。またそんなにすることにかけては、ここは日本にいるときよりもはるかに手易いことであり、そうしていても誰からも邪魔されないように、ここの日日の生活様式が出来ていた。二人に争うことがあるといえば、夜眠るときどちらかの一方が早く眠りすぎたとか、デパートで少し買物の時間をかけすぎたとか、いくらか会う時間が遅すぎたとかいうほどのことよりなかった。しかし、そうとはいえ久慈の心底には絶えず何か物足らぬものがあった。いずれ二人が別れるものなら、いつ別れても良いと準備している心がいつも二人の中にひそんでいたからだったが、それも一つは、そのような予想が互いにあればこそ争いのない旅の日といえばいえるのかもしれなかった。もしどちらかそれを明瞭に切り出して云ったなら、二人のどちらかが困りはてる結果になるということも定っているのだった。
こんなにつき詰めた感情をどっか最後の一点に置き残している久慈と真紀子とのある日、いよいよパリ祭が明日だという日になった。街角には踊りに準えるバンドの杭の打ち込まれる音が聞える一方に、フランスの各県から集って来た労働者の団体が三十万四十万と、檻のようなパリの中へ続続くり込んで来ていた。