Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
そこへコーヒーと鮭とパンが出た。
「いやに静かだね。気味が悪いや。」
とまた久慈はあたりを見廻して云った。波頭のような二百ばかりの空虚の椅子の犇めき詰っている中にぼつりと浸っている二人だった。コーヒーだけが湯気を静かに立てていた。
「千鶴子さん明日帰るとすると、今夜一つ送別会をしなきやならないが、どこでしょう。ボアの湖へ行くか。それともモンマルトルの山の上がいいかね。」
久慈が読みとるようにそう云って矢代の眼を見詰めても矢代はすぐ返事が出来なかった。
「どこでも良かろう。」
「どこでも良いってどういうことだ。二人きりがいいなら、僕らは遠慮をするよ。」
「いや、そんな必要はもうないのだ。」
と矢代は急いで云った。
「もうないって? 何んだか分らないね。」
妙にくぐり込んで笑う久慈を矢代はうるさく思って黙った。確かに千鶴子と今日一日二人きりの世界を楽しみたいと矢代の思っていたことは事実だったが、それを久慈から指摘されることは、用を不用にする歪みを二人の間にひき起す危さを感じ、矢代は黙ったのである。すると、しつこく久慈は、
「だって、今日一日じゃないか。何んとか恰好をつけとく方がいいに定ってるよ。