Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
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「うむ、なかなか面白い。これや、あなた、見てごらんなさい。なかなか面白いものですよ。」
と云っては矢代にも一緒に見ることをすすめた。
「オリンピックは僕も見ましたからね。競争はどうも――そのフィルムだって、満洲里まで着けば、後はそこからT社のとまた競争するんだから、もう何んでも競争だ。」
矢代はこの競争ということが何事によらず嫌いな性質だった。T社から依頼を受けたマラソンのフィルムにしても、A社との競争だと思うと愉快ではなかったが、シベリヤの間だけは無競争も同様なので、する必要のない今の期間だけでも、せめてその競り合いから脱け出していたかった。矢代のこの競争嫌いは、千鶴子を挟んで久慈との間で起りかけたパリでのある一事件の期間も、自分から身を引いたほどだった。また彼が外国で競争らしいものをしたのは、久慈と二人で千鶴子の周囲を廻った記憶以外には一度もなかった。
とにかく、矢代はこのシベリヤの十日の間だけは、忘れられる限りもう何事も忘れていたかった。このようなとき、ふと朝になって眼を醒し、棚の上にある競争用のフィルムが眼につくと、突然その一角から現実の呼吸が強く顔を吹きつけて来て、急いで彼は視線を反らせた。