Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「そうだなア。」と云いながら、窓から麓の漁村を見降ろして一瞬ヨーロッパの風景を頭に泛べた。
「そこにいるとき良い所と、後で思い出してから良くなる所とあってね。一口では云えないものだ。」
「でもまア、あたしたちの面白そうなところよ、パリはいいでしょう?」
「うむ。」と矢代は低く口の中で呟くように云って苦笑した。
幸子は眼ざとく兄の表情の濁りを見てとると不審そうに一寸黙った。
「まア、あんなものだなア。」とまた矢代は云って顔を赧らめながら幸子から顔を背けた。
「おかしな人。」
「何が?」
「じゃ、つまらなかったの、行って?」
執拗に表情の後を追って来そうな幸子の視線を、今は矢代は手で払い除けたかった。
「そういうことは、そのうちおいおい話すとして、それより早く身体を善くすることだ。幸スケのような病気をする奴は、やはり心がけが善くないからだよ。」
「そう云われれば、それまでだけれど。――でも、お母さん心配してらっしてよ。お兄さんひどく元気がないようだが、どうしたのかしらなんて。別に心配するほどのことも無いんでしょう。パリまで行って――」
「無いさ。」矢代は簡単にそう云ってまた笑った。