Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「幻影か――」と塩野は云ったまま黙っていたが、

「さっき来るとき矢代君、妙なことを云いましたね、枯葉の散って来たときさ、僕らは天罰を受けたと、君は云ったよ。あのとき何んだか僕ぞっとしたね。」

笑い話のつもりらしかった塩野の意図に反して、何んとなく座は一瞬しんと静まり返った。千鶴子は座を立ってひとり外へ出て行った。別に眼ざわりな立ち方ではなかったが、前から話の途中に席を脱す癖のあるのが千鶴子の欠点だと矢代は思っていたので、また始ったと思い気にかかるのだった。

チロルの山の上での夜も、急に見えなくなった彼女を探しに行くと、氷河を向いてひとりお祈りをしていたことなど思い出し、千鶴子の心の中でカソリックはどうなっているのかと、暫く彼は憂鬱に食卓の上に肱をつき彼女の戻るのを待っていた。

由吉は陶器に趣味があるのか出て来る食器を取り上げ裏を返した。そんなことなどいつもは矢代の気にならぬことだったが、それが千鶴子の兄の癖かと思うと自然に彼も注意した。

千鶴子は化粧を直してまた部屋へ戻って来ると、出て行ったときとは違い、特長のある靨も明るく笑顔をひき立て、何か今度はしきりと矢代に話しかけたそうな視線だった。