Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
今も彼は二畝もつづけて鍬を打ち降ろしていると、汗が額から頬を伝い、土の上に滴り落ちた。それもわが身の罪の流れ滴るのを眼にするように感じ、腕が痺れて来ても矢代は止めたくはなかった。久しく運動から遠ざかっていたので呼吸も切れ易かった。腰も懶るくなり、咽喉もとの唾も涸れて来た。しかし、そうしている時にも流れる汗が激しくなって来ると、彼は何か見栄に似たある虚栄心さえ次第に覚えて来るのだった。矢代は鍬の柄に肱をつき畑を見廻した。軽く跳び弾んで来る快感の中から、こういう見栄の混じて来るのはこれはどうしたことかと、やがて憂鬱になりのろのろと鍬を上げては降ろした。正義感もそれを感じれば感じるほど不正を覚えて来る畑打ちだった。
矢代はこんな難しいものを畑から得ようとは思わなかったので、疲れのまま小川の縁の枯草の中で休んだ。日に解け湿った土から蕗が勁い芽を出し、傍の小石もその芽に押し動かされた様子が見えた。枯草の間を流れる水の面に温かそうな霞が漂い、冬もようやく去ろうとしている気配があたりの草叢から感じられた。
この日の労働は彼の身に応えて全身に疲れが廻ったが、外国から帰って以来、矢代は初めて心に落ちつきを得たように思われた。