Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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りょしゅう

旅愁

横光 利一

Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme

Aozora Bunko

「馬鹿ッ。自分で金を儲けずに誰が来る。」

と呶鳴りつけた。

弁護士としてある事件を片付け二万円を手にし、その働きで来ている青年のことを矢代も知っていたが、しかし、それを知らずにふと口にした商務官の一言が、こんなに人を怒らしたのも、理由があった。神戸を船で発つまでは、船客たちの誰も、船に乗り得られた費用の出所が自力か否かを問わず、外国へ行くことに変りのない筈と乗り込む常のことも、さて船が進み始めてみると、まったく意外なことに、各自の自力で来ているか否かが、いつか暗黙のうちに、乗客の価値決定の標準に自らなっているものだった。随って矢代も、親から貰った金銭で旅人となり得た自分に絶えず弱点を感じ、苛責を覚えていた際だったので、このとき青年に洩した商務官の一言ほど、矢代の胸を激しく衝いた言はなかった。それはまた航海の途中のみとは限らず、外国を歩く旅路のどこまでも従き纏って来る無念さである。

「まア、そう怒るな。自分で儲けた金なら、許すとしよう。」

と、商務官は即座に大きく出て笑ってのけたので、無事船中のその場は丸く鎮ったが、弁明の余地のない矢代に、却って痛さは一層響き残って消えなかった。