Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
「お父さんを寝せ変えましょうかね。」
と、彼は母を驚かせぬように注意して云った。
「そうそう。」
母と彼とは父の寝室へ入った。そして、牀の前へ新しく敷き変えた蒲団に、正しい姿勢で父を寝かせようとしたが、もう父の身体は板のようにぴんと足を張り、吊り伸びてこちこち鳴りそうに固かった。彼は父の胴の下へ手を廻して跼み込むと、顎が腹部へ触れたその途端、急に悲しさが込み上げて来て顔を父の腹に伏せたまま声を上げた。
「立派な顔になってらっしゃること。」
母は微笑を含んでいる父の高い額を撫でながら一言いった。すると、彼はまた急に悲しさが引いてゆくのを覚え、腕に力を籠めて父を抱き上げた。
「でも、喜んで死なれたんだから、まだ良かったですよ。ほんとにあんなに喜んでね――」
父を正座へ寝かせてからそう母は独り言をいって、子の矢代とは反対にどこか嬉しそうな表情だった。見たところ、少しも悲しそうでない母が矢代には分らなく、また物足りなかった。彼は火鉢を運んで来て、このまま父といつまでもこうしていたいと思った。一夜の看病も出来ずにしまった死の速さに、父の身体がどんなに変ってゆこうとも、激しくなお父のために疲れたかった。