Japanische Klassiker mit Furigana
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りょしゅう
旅愁
横光 利一
Lesen Sie 旅愁 (りょしゅう) von 横光 利一 (よこみつりいち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 576.941 Zeichen · 1138 Bildschirme
そして一同はロビーから六階の高い食堂へ移り変って、夕日に漲る海面を下にしたバルコオンで食事の支度を待つのだった。大きく拡がった海が刻刻に色を変えてゆく後から、追うように灯が港に点いていった。薄明りのころの横浜は遠い沖が瑠璃色に傾き、船の赤い横線が首環のように水面に眼立って来る。矢代はパリにいるとき、カルチエ・ラタンで久慈と食事中、傍にいたアンリエットが突然、匂いの強いセロリの茎をぽきりと折って、「ああ、横浜へ行きたい。」と嘆息を洩した夕暮どきを思い出したりした。そのときは、千鶴子が明日ロンドンから来るという日で、二人は彼女の宿の選定に悩んでいたときだったが――
茂った帆檣の見える埠頭の方から汽笛が鳴った。バルコオンの欄干のところで、真紀子と千鶴子は皆から少し離れた位置に立ち、裾に微風のそよぐ忍び声で何事か話していた。二人の笑顔を海面からの反射が細かく浮き上げ、スカートのぴったりと締った物腰の揺れる、あたりの燃えるようなひとときだった。
その横の空地を越した向うに、アンリエットが父と二人でいたという、廃館になったマッサアジュリーム会社の白壁が見えた。