Japanische Klassiker mit Furigana
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ひめくり
日めくり
壺井 栄
Lesen Sie 日めくり (ひめくり) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.884 Zeichen · 34 Bildschirme
「勤めなんか、いやんなった」
とはき出すようにいったりすることもある。胸元につかえた不安を、そんなふうに吐き出していたのであろう。
「夢の中でね、悪い奴が催眠術をかけやがってね、普通の論理では成り立たんような理窟を押しつけやがって、苦しくて苦しくて。――いくらたのんでもその催眠術を解いてくれないんですよ。もうだめかと思った」
まるで夢ではないようにそれをくり返して訴え汗を流して憤慨したりもした。そんなことがあってから、衰弱は日々に目立った。それでも今日社長が見えて、力づけに詩集のことを云ってくれると、彼の消えかかったような生命の灯も一瞬もえ上ったのか、それで今日はいつもより少しばかりごきげんだったのだと、文吉はいい、
「お前たちが汁粉屋へいってるときさ、いろんな話をしだしてね」
「あらそう」
「彼は、出版の仕事について、今年でちょうど二十年になるんだってね」
「そう」
「仕事の面で、ぼくは仕合せだったって――」
「…………」
「いやな思いを一度もしなかったということは、ことにつきあった限りの詩人たちが、みんないい人だったわけだし、ぼくの目にも狂いがなかったということだと思って、うれしいんですよって」