Japanische Klassiker mit Furigana
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かにのかい
日本の怪談(二)
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談(二) (かにのかい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 80.664 Zeichen · 171 Bildschirme
お種は何時の間にか体を真直にしていた。少年の姿はすぐ雑木の陰に隠れてしまったが、お種はうっとりとなってそのまま立っていた。
お種はその日の夕方、母親といっしょに平生のように夕飯の準備をしたが、その準備ができて家内の者が食事をはじめているのに、裏口の微暗い蚊の声のする処にぽつねんと立っていた。それを見て母親が云った。
「お種はそこで、何をぼんやりしよる、はよう飯を喫たらいいじゃないか」
「うウ」
お種はまだぼんやりしているので母親が畳みかけて云った。
「はよう飯を喫て、与平さんのところに湯が沸いたと云うから、もろうて入って来た」
「あい」
お種はやっと気が注いたようにあがって来て母親の傍で飯を喫ったが、平生のように喫わないですぐ茶碗を置いた。
「今晩は、ふだんのように飯を喫わんが、心地でもわるいか」
「わるうない、なんともない」
お種は母親の顔を見た。
「なんともなけりゃ、これから往て、湯に入って来た」
「あい」
「おそうなったら、湯がきたのうなる、はやいがいい」
「あい」
お種は土間へおりて手拭竿から手拭を執り、糠袋を持って表へ出た。月が出て外は明るかった。お種は門口の二三段の石段をおりて家の下の道を右の方へ往った。