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Japanische Klassiker mit Furigana

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ぎじんのすがた

日本の怪談

田中 貢太郎

Lesen Sie 日本の怪談 (ぎじんのすがた) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.030 Zeichen · 115 Bildschirme

Aozora Bunko

老婆が前に立って室の中を彼方此方と見てまわったが、それらしい者の影もなかった。そして、最後に戸締を調べてみたが、これまた宵のままですこしも変ったことはなかった。

「不思議だね、たしかに壮い男がいて、起きて逃げる拍子に笑ったのだが」

「おかしゅうございますね」

お滝はうす鬼魅が悪いので、老婆の寝床を己の室へ持って来さして寝かせたが、もうべつに不思議な事はなかった。

翌晩になってお滝は昨夜のことが気になるので、表座敷と背中合せになっている新一の寝ている奥の室へ老婆を寝かせた。

そのうちに平生の癖で長くは睡っていられない老婆が眼を覚したところで、お媽さんの室にものの気勢がした。老婆はまた昨夜の奴が来たのではあるまいかと思って、頭をあげて宵から隙かしてあった襖の隙間から覗いた。縁側の方を枕にして寝ているお媽さんと並んで寝た男の頭が行灯の光に見えた。

「また来やあがった」

老婆は起きあがるなり、襖を開けて表座敷へ勢込んで入った。と、怪しい男は急に跳び起きて左の茶の間の方へ往った。

「この野郎、逃げようたって逃がすものか」

老婆はその方へ走って往った。その物音にお滝が眼を覚して起きあがった。