Japanische Klassiker mit Furigana
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ぎじんのすがた
日本の怪談
田中 貢太郎
Lesen Sie 日本の怪談 (ぎじんのすがた) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.030 Zeichen · 115 Bildschirme
殊に兄の女(むすめ)を妻室にするに至っては、不倫の甚だしきものであった。心ある者は何人(たれ)も眉を顰(ひそ)めたが、皆元親の思惑を憚って口にはしなかった。
「当家には、孫次郎殿がございますから、孫次郎殿を世嗣ぎにするのが当然のことかと思います」
凛とした声が一隅から聞えた。皆驚いてその方に眼をやった。小柄な色の白い男の顔であった。それは吉良左京之進親実であった。元親の弟の子で、元親の女を娶って甥婿となっている者であった。親実は初めに弘岡吉良峰の城に封ぜられ、当時は蓮池に移っていた。
「それに、兄の女を内室にすると云うことは、人倫にもはずれた所為かと思われます」
左京之進は遥に元親の方を見た。
「吉良殿の申されるとおり、孫次郎殿をさし置いて、千熊丸をお世嗣ぎとなされることは、順序を乱すの恐れがあると存じます」
親実の右隣から詞(ことば)を出すものがあった。それは、左京之進の同族比江山親興であった。
「吉良殿の申されるところも一理があると思われますが、お家のことは、お家の頭領になる者の思うとおりにするのが、理の当然かと考えます」
家老の久武内蔵助親信が左京之進の詞を駁した。