Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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じょきゅう

日本プロレタリア文学集・7 細井和喜蔵集

細井 和喜蔵

Lesen Sie 日本プロレタリア文学集・7 細井和喜蔵集 (じょきゅう) von 細井 和喜蔵 (ほそいわきぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.732 Zeichen · 33 Bildschirme

Aozora Bunko

「これ、お麦たべるかしらん?」

「うん、潰し麦を食べるそうだ。」

彼は妻の問いに答えた。すると彼女は可愛い動物に買って来てやるのだといって、乾物屋へ出かけて行ったので、彼もまた動物を部屋の中に放したままにして置いて草をさがしに戸外へ出た。

けれども、容易に草は見つからなかった。

その辺り一体は荒涼たる工場地で第一草の生えているような空地がない。一つの工場だけにでも一万人からの労働者が集っている大紡績工場が七つもあるのを筆頭に、そのほか無数の中小工場が文字通り煙突を林立させて居る。そして真っ黒な煤煙を間断なく吐き出すので植えても樹木がちっとも育たない。社の境内にはその昔、枝が繁茂して空も見えないほど鬱蒼たる森林をなしていたであろうと思われる各種類の巨木が、幾本となく枯死して枝を払われ、七五三縄を張られている。そして境内には高さ三間以上の樹木を見る事が出来ないのである。また河はおそろしく濁って居った。染工場から鉱物染料の廃液を流すので、水は墨汁のように黒い。目高一ぴき、水草ひと葉うかばぬ濁々たる溝だ。

米が買えぬので一日二食主義を採るべく余儀なくされた彼は自分の空腹も打ち忘れて小さき動物の事を思い、それに与えるためたとえ一摘みの草でもむしろうと、とっぷり暮れた初夏の工場街をあてどもなく彼方此方さまよった。