Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
膳には、麩(ふ)の露、香の物などが付いた。私達は窓に近い板敷の上に直(じか)に坐って、そこで朝飯の膳に就いた。
回診は十時頃にあった。医学士達は看護婦を連れて、多勢で病人の様子を見に来た。終焉(おわり)も遠くはあるまいとのことであった。午後までも保(も)つまいと言われた。前の日まで、お房が顔の半面は痙攣(けいれん)の為に引釣(ひきつ)ったように成っていたが、それも元のままに復(かえ)り、口元も平素(ふだん)の通りに成り、黒い髪は耳のあたりを掩(おお)うていた。湯に浸したガアゼで、家内が顔を拭ってやると、急に血色が頬へ上って、黄ばんだうちにも紅味を帯びた。痩(や)せ衰えたお房の容貌(かたち)は眠るようで子供らしかった。
よく覚えて置こうと思って、私は子供の傍へ寄った。家内はお房の髪を湿して、それを櫛(くし)でといてやった。それから、山を下りる時に着せて連れて来たお房の好きな袷(あわせ)に着更えさせた。周囲(まわり)には「姉さん達」も集って来ていた。死は次第にお房の身(からだ)に上るように見えた。
こうなると、用意しなければならないことも多かったので、それから夕方まで私は子供の傍に居なかった。