Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

口の悪い支那の方の友達ばかりでなく、ややもすると旧馴染(むかしなじみ)の「お新ちゃん」にすら「頭の禿げた坊ちゃん」なぞと笑われそうな気がして来た。神田の宿へ戻って長く忘れずにいるあの旧い接吻(キス)を考えた時は、山本さんは泣くことも出来ないほど悲しく成った。

それから二日ばかり経つと、お牧も無事に退院して、復た山本さんの方へ来た。

「どうでした、伊豆の旅は」とお牧は何度も同じことを兄に尋ねた。

「実に好かった……そりゃ、お前、近頃に無い好い旅だった……」

「私もお新ちゃんから、散々羨ましがらせられた……そのかわり、兄さんには歌舞伎座を奢(おご)って頂きますよ」

こういうお牧は、そう長くユックリしてもいられない人だった。

芝居見物の晩から、お新もお牧に随いて山本さんの旅舎(やどや)の方へ一緒に成った。いよいよ女連(おんなれん)が郷里(くに)へ向けて発(た)つという日には、山本さんは朝から静止(じっと)していなかった。支那土産の縮緬(ちりめん)の他に、東京で買った物まで添えて、隣座敷へ行って見ると、お新だけ居た。

お新は心から気の毒そうな顔付で、山本さんがそこへ出した物を受かねていた。