Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

と答えたが、やがて独語でも言うように、

「旦那様は今日はどう遊ばしたんですか……奥様の御召物が残っていないかなんて、ついぞそんなことを御尋ねに成ったことも無いのに……」

こう言って見て、手に持った魚の皿を勝手の方へ運んで行った。

庭で鳴く小鳥の声までも、大塚さんの耳には、復た回って来た春を私語いた。あらゆる記憶が若草のように蘇生る時だ。楽しい身体の熱は、妙に別れた妻を恋しく思わせた。

夕飯の頃には、針仕事に通って来ている婦も帰って行った。書生は電話口でしきりとガチャガチャ音をさせていた。電燈の点いた食堂で、大塚さんは例の食卓に対って、おせんと一緒に食った時のことを思出した。燈火に映った彼女の頬を思い出した。殊に湯上りの時なぞはその頬を紅くして笑って見せたことを思出した。

「御塩焼は奈何で御座いますか。もし何でしたら、海胆でも御着け遊ばしたら――」

と言って婆さんは勝手の方から来た。婆さんの孫娘がかしこまって給仕する側には、マルも居て、主人の食う方を眺めたが、時々物欲しそうな声を出したり、拝むような真似をしたりした。

音沙汰の無い、どうしているか解らないような子息のことも、大塚さんの胸に浮んだ。