Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

私は御気毒にもあり、御恥しくもあり、奥様の御傍へ寄添いながら、

「御父さんは上りにくいもので御座ますから、あんな酔った振をして、恍けて参ったんで御座ます」

「お前に逢い度からさ」

「私が是方へ上る時に、『己も一諸に行こう』と申しますから、誰がそんな人に行って貰うもんか、旦那様の御家へなんぞ来るのは止しとくれ、と言って遣りましたんで御座ます」

「逢い度ものと見えるねえ」

「『十月余も逢わねえじゃねえか、顔が見たくはねえか』なんて申しましたよ。馬鹿な、誰があんな酔ぱらいに逢い度もんか」

「御母さんも心配していなさるだろうよ」

と言われて、私は逢いに来た父親よりも、逢いに来ない母親の心が恋しくも哀しくも思われました。歯医者は熟と物を考えて、思い沈んでおりましたのです。奥様はその顔を覗くようになすって、

「桜井さん、何をそんなに考込んでいらっしゃるの」

「成程――さすがは親だ」

「大層感心していらっしゃるのねえ」

「人情という奴は乙なものだ。……そうかなあ」

「何が、そうかなあですよ」

「難有い」

「ホホホホホ」

「そういうものかなア」

「あれ、復」

「そうだ、もう半年も手紙を遣らない」