Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
口に出しては仰らないだけ、それが姿に顕れました。目は烈しい嫉妬の為に光り輝やいて、蒼ざめた御顔色の底には、苦痛とも、憤怒とも、恥辱とも、悲哀とも、譬えようのない御心持が例の――御持前の笑に包まれておりました。総身の血は一緒になって一時に御頭へ突きかかるようでした。もうもう堪え切ないという御様子で、舌なめずりをして、御自分の髪の毛を掻毟りました。こう申しては勿体ないのですが、旦那様程の御人の好い御方ですら制えて制えきれない嫉妬の為めには、さあ、男の本性を顕して――獣のような、戦慄をなさいました。旦那様は鶏を狙う狐のように忍んで、息を殺して奥の方へと御進みなさるのです。怖いもの見たさに私も随いて参りました。音をさせまいと思えば、嫌に畳までが鳴りまして、余計にがたぴしする。生憎敷居には躓く。耳には蝉の鳴くような声が聞えて、胸の動悸も烈しくなりました。廊下伝いに梯子段の脇まで参りますと、中の間の唐紙が明いている。そこから南向の御部屋は見通しです。私は柱に身を寄せて、恐怖ながら覗きました。
南の障子にさす日の光は、御部屋の内を明るくして、銀の屏風に倚添う御二人の立姿を美しく見せました。