Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

やがて、ウネウネと続いた草屋根、土壁、柿の梢(こずえ)、石垣の多い桑畑などは汽車の窓から消えた。小諸は最早見えなかった。

この旅には、私は山から種々ななものを運ぼうとする人であった。信州で生れた三人の子供は言うまでもなく、世帯の道具、衣類、それから毎日の暮し方まで、私は地方の生活をソックリ都会の方へ移して持って行こうとした。楊(やなぎ)、楓(かえで)、漆(うるし)、樺(かば)、楢(なら)、蘆(あし)などの生い茂る千曲川(ちくまがわ)一帯の沿岸の風俗、人情、そこで呼吸する山気、眼に映る日光の色まで――すべて、そういうものの記憶を私は自分と一緒に山から運んで行こうとした。

汽車が上州の平野へ下りた頃、私は窓から首を出して、もう一度山の方を見ようとした。浅間の煙は雲の影に成ってよく見えなかった。

高崎で乗換えてから、客が多かった。私なぞは立っていなければならない位で、子持がそこへ坐って了えば、子供の方は一人しか腰掛ける場処がなかった。お房とお菊はかわりばんこに腰掛けた。お繁はまた母に抱かれたまま泣出して、乳をあてがわれても、揺(ゆす)られても、どうしても泣止まなかった。