Japanische Klassiker mit Furigana
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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
Lesen Sie 明治劇談 ランプの下にて (めいじげきだん ランプのもとにて) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.283 Zeichen · 329 Bildschirme
その後、かれが出勤している舞台で、わたしの記憶に残っている役々は市村座の「今文覚助命刺繍」で、おたきという唖娘。千歳座の「水天宮利生深川」で、おゆきという貧家の娘。同座の「盲長屋梅加賀鳶」で、お民という子守女。同座の「恋闇鵜飼燎」で、お夏という商家の娘などで、勿論そのほかにいろいろの立役も勤めていたのであるが、かれが好評を博した役々はいつも娘形であったらしい。しかし彼の欠点は調子の悪いことで、技芸は年齢以上に上達していながら、ややもすればその不愉快な音声で舞台の気分をぶち毀す嫌いがあった。彼は五代目菊五郎の実子ではなかったが、ともかくもその家に養われて人となったので、楽屋からも世間からも相当に認められていたのであるが、明治十九年――前にいった「鵜飼燎」の娘お夏という役が最後であったように記憶している――の夏ごろから突然に東京の舞台を去ってしまった。ある女のことから養父菊五郎の勘気をうけて、かれは大阪へ走ったのだと伝えられた。
大阪では菊之助の名を憚って、かれは松幸と改名していたということであった。それから五年の間はどんな劇場生活を営んでいたか、わたしはちっとも知らないのであるが、尾上松幸という青年俳優は京大阪の各地を流浪して、非常の辛酸を嘗めたように伝えられている。