Japanische Klassiker mit Furigana
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めいじげきだん ランプのもとにて
明治劇談 ランプの下にて
岡本 綺堂
Lesen Sie 明治劇談 ランプの下にて (めいじげきだん ランプのもとにて) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 167.283 Zeichen · 329 Bildschirme
なんでもその年の九月なかばと覚えている。遼陽戦がわが勝利に終って、わたしが城北の大紙房という村落に舎営している時のことであった。満洲の秋は早いので、もう薄寒い風の吹き出した夕暮に、内地から郵便物が到着したという通知があったので、わたしたちは急いで師団司令部へうけ取りにゆくと、岡本宛の分として五、六通の郵書とひと束の新聞紙とを渡された。新聞は二十日分ほどの嵩があったので、わたしは小脇に引っかかえて来た。宿舎へ帰り着くころには日も暮れ切って、床の下にはこおろぎが寒そうに鳴いている。うす暗い蝋燭のあかりを頼りにして、わたしは先ず故郷の人々から送って来た郵書を読んで、それから新聞紙の束をほどいた。そうして、だんだんに読んで行くうちに、八月八日の紙上に市川左団次が昨七日死去という記事を掲げてあるのを発見した。
「左団次もとうとう死んだか。」
去年の十一月、東京座で彼の「碁盤忠信」を見物したのが私としては最後であった。団菊以後の一人がここにまたほろびてしまったのである。わたしは俄かにさびしい心持になって、ぼんやりと表へ出ると、陰暦の十五夜に近い月の光りがあざやかに地を照らして、葉のまばらな柳のかげが白くなびいていた。