Japanische Klassiker mit Furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Lesen Sie 春いくたび (はるいくたび) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 70.094 Zeichen · 142 Bildschirme
「なに、甲子雄とお嬢さんの顔が見たくなったんだ、二人の仕合せな顔がさ」
「そいつぁあいけねえ」佐兵衛はぐいと乗り出して、
「他の者あとにかく、そんな尾羽うち枯らした姿をお嬢さまに見せちゃならねえ」
「――なぜだ!」
「なぜったって、そう云えば先生にだって分るはずだ。ねえ先生、おまえさんが行衛知れずになってから、お嬢さまは落胆なすって、半年の余も病気におなんなすったんだ、――誰が知らなくとも、おまえさんを慕っていなさるお嬢さまの気持は、この佐兵衛がようく知っているんだ、……そんな、そんな落魄れた恰好を見せたら、お嬢さんはきっとまた」
「ははははは、おい止せよ佐の字」
兵馬は大剣を腰にさしながら、
「水の流れも人の心も、半刻として止まらねえのが世の中だ、お嬢さんにしたって昔は知らず、今は甲子雄と婚礼が定ったといえば、落魄れた兵馬を見るのもいい慰みだろう」
「――先生は人が違いなすったねえ」
「まあそんなところさ、行ってくるぜ」
と兵馬は表へ出ていった。
捜すまでもない。緑町四丁目で――有名な本所七不思議の一つ、『足洗い屋敷』の向う裏になっている角地、立派な構えで梶派一刀流指南、松林甲子雄という看板が出ていた。