Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しゅんせつ

春雪

久生 十蘭

Lesen Sie 春雪 (しゅんせつ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.672 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

何台か通りすぎて行ったあと、日本通運のマークを入れたトラックが進んできたが、柚子が立っているあたりまで近づくと側板に腰かけている一人だけ残して、三十人ばかりの俘虜が、申しあわせたようにクルリとむこうへ向いてしまった。

その一人は、どこか弱々しい感じのする、二十四五のノーブルな顔をした若い男で、柚子のほうへ花が開くような微笑をしてみせた。羞かんだような微笑の美しさは、たとえようのないもので、あまり物事に動じない池田の心にさえ、強く迫ってくるような異様な情感を味わわせた。

池田が見たのは、それだけのことだった。寄宿舎でばかり暮していた、世間見ずの廿三の娘が、あれほどの魅力を、やすやすとはねかえせようとは思えないが、だからといって、それ以上のことは、なにが出来るものか。柚子の心のなかに分け入って、そういう情緒は不潔だと、きめつけるつもりなら問題は別だが、形のうえでなら、非難することも、叱ることもできないみょうなぐあいのものである。池田も当惑の気味だったが、用心するに如くはないと思って、窓をあけて呼ぶと、柚子は平静な顔で、車のそばへ寄ってきた。

「ちょっと話があるから、寮へ行こう。