Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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しゅんせつ

春雪

久生 十蘭

Lesen Sie 春雪 (しゅんせつ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.672 Zeichen · 23 Bildschirme

Aozora Bunko

二

ふと、我にかえると、いつの間にかデザート皿が出ていて、みなの視線がうながすようにこちらへむいている。忘れていた……伊沢の次に弔辞を述べるはずだったと、池田は咄嗟に立ちあがると、眼を伏せたまま、

「小室さんのお嬢さんが、二十三という人生の春のはじめに、この世を見捨てて行かれたということは、惜しみてもあまりあることで、ご両親のご心中……」

と、ねんごろな調子でやりだした。

「池田君、池田君」

伊沢が上着の裾をひっぱる。なんだ、といいながら振返った拍子に、いっぺんに環境を理解した。池田はひっこみがつかなくなったが、さほど、あわてもせず、

「ご当人にとっては、結婚は、新しく生まれることであり、人生における、新しい出発でありますけれども、ご両親にとっては、これで、娘は死んだもの、無くしたもの……そしらぬ顔はしておりますが、娘を嫁にやる親は、みな、いちどはこういう涙の谷を渡って……」

と、むずかしいところへ、むりやりに落しこんだ。

二

伊沢と二人でラウンジまでひきさがったところで、池田は急に疲れてコージイ・コーナーの長椅子へ落ちこんだ。

「名スピーチだったよ。弔辞と祝辞のハギ合せなんてえのは、ちょっとないからな」