Japanische Klassiker mit Furigana
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しゅんせつ
春雪
久生 十蘭
Lesen Sie 春雪 (しゅんせつ) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.672 Zeichen · 23 Bildschirme
会社へは、寮から電話をかけさせるから、かまわない」
寮といっているが、この十年来、メートレスの役をしている、加津という女にやらせている待合を、便宜的な名義で保持しているので、そのことは柚子もうすうす知っているらしかった。
二百米ほどむこうの島に、俘虜収容所の建物があるので、海沿いの家の二階の窓はみな目隠しをされてしまったが、その家は建上りが高いから、板塀越しに、バラックの棟を並べた収容所の中庭がのぞける。
「あれが収容所だ」
柚子は、のびあがって見ていたが、
「空襲なんかあったらどこへ逃げるんでしょう」
と、つぶやくようにいった。
「まあ、そこへ坐りなさい。けさ、長いことバスの停留所に立っていたね。おれは車の中から、お前のすることを見ていた。注意してくれたひとがあったので、すこし前から、まいにち見ていた」
柚子は困ったような顔で笑って、
「あたし、ほんとうに馬鹿よ。こんどくらい、よくわかったことはないの。もう、やめますから、お叱りにならないで、ちょうだい」
「馬鹿だった、だけじゃ、わからない。なにをしていたのか、お前の口から、いってごらん」
「ごらんになったでしょう、あの若いひと……はじめてすれちがった日から、あんな眼つきで、あたしを見て行くのよ。